研究所の休憩室

クルマは娯楽の道具として考えた方が楽しい理由
クルマの選び方

クルマの選び方

クルマを選ぶとき重視する項目は各個人によって違うと思いますが、最も多くの方が重視される項目はやっぱり「燃費」かと。ところで2010年にあったエコカー補助金を覚えておいででしょうか。初度登録から13年超のクルマを廃車にして、政府が認める燃費の良い新車を買うと25万円の補助金が国からもらえるというアレです。その当時私は日産系ディーラーの店長をさせて頂いておりました。当時の日産にハイブリッド車は無く、大ヒットしたトヨタの三代目プリウスに大きく差を付けられておりました。リッター30㎞超えのプリウスに対し20㎞も走らないティーダやノートで戦うわけですから苦しかったですよ。ただ価格差が相当ございましたので手段がないわけではありませんでした。プリウスとティーダの購入から廃車に至るまでの計算シートなどを作成して説明してました。ハイブリットであるプリウスを買ってガソリン車であるティーダよりお得になるには年間3万キロくらい(?記憶が定かではありませんが…。)走らないと旨みが出ないと説明してました。それでも多くの人がプリウスを買ってました。価格がどうこうよりハイブリットに乗ってみたいという好奇心が勝るのでしょう。プリウスを購入した方から、ガソリンを入れに行く回数が半分になったとか、ドライブに行ったけど今までより燃料計の減りが全然遅いなど、よく耳にしました。月々のガソリン代が下がることで明るい気分になり外出頻度が上がり、思い出作りの機会が増えるでしょう。そうして結局出費は増えるかもしれませんけど節約だけの生き方もつまらないです。燃費重視がお財布重視に直結するわけではないということですね。

話は変わって1992年。私が日産系ディーラーに勤め始めた頃の話です。改めて書いてみると大昔。それはさておき、当時の日産自動車はS13シルビアや180SX、R32スカイライン、Z32型フェアレディZ、パルサーGTI-R、初代プリメーラなどゴージャスなラインナップを誇っていました。今では結構なお値段になっておりますが、スカイラインジャパンとか130型やZ31型のフェアレディZの2by2、R30スカイライン(と言ってもFJじゃなくてL型エンジンの方)、430セドグロ、B310サニーなどは程度がそこそこ悪ければタダでもらえちゃう時代でした。(写真は私が昔2万円で買ったB110サニー)この頃の私は一番下っ端のメカニックでしたので、お客様も何の警戒もなく新型車のことを聞いて下さいました。「こんど発売されたクルマの事なんだけど…。」という感じで。営業マンに聞くと買って買って攻撃が始まるからでしょう。思い返せば当時はそんなに燃費の事を気にしているお客様はおらず、一番聞かれたのは馬力。ちょっとマニアックなお客様だとトルクの事や足回りはどうなっているのか等を聞かれた事を覚えております。バブル崩壊直後と言われ、ここから不景気が始まったとされる時代でしたが、今よりは世の中の景気も良かったんだろうと思います。節約する必要がなかった時代とでも申しましょうか。リッター10㎞以上走れば「燃費が良いクルマ」でしたからね。未だにこういう考え方をする人も少数ですがいらっしゃいます。運転自体を楽しんでるタイプなのかなと思います。それはそれで良いカーライフです。自分のお金で維持していくのだから他人がとやかく言う事でもないですし。一度味わったら燃費の良いクルマから離れたくなくなる気持ちも分かりますが、リッター30㎞以上走れるクルマでないとただちに生活が苦しくなるという人はそんなに居ません。燃費が悪くても乗りたいクルマがあるならば乗れば良いと思います。

クルマを買えばしばらくの間お付き合いすることになるんですから、燃費にしろ性能にしろスタイルにしろ人に選んでもらうのではなく自分の納得のいくものを選ぶのが良いかと思います。そうしないとすぐに飽きるクルマを掴むことになります。これが一番悪い買い方です。

クルマの楽しみ方

クルマの楽しみ方

一口にクルマを楽しむといっても人それぞれ楽しみ方は違ってくると思います。ドライブを楽しむ人もいれば、アウトドア用品を積んでキャンプに出掛けたり、買い物や観光地へ出掛けたり。ちょっと変わった楽しみ方だと「眺める」という方もいます。これまたディーラー時代の話ですが転勤先で工場長をさせて頂いていた時の話です。スカイラインGT-R(R34)をご所有のお客様がいらっしゃいまして、私どもに車検をご依頼いただいておりました。5年も経っているのにすごくキレイで走行距離は2,000㎞以下だったと思いましたが、ずいぶん昔の事なので記憶が定かではございません。数百キロだったような気もします。もちろん名車と云われるクルマなので乗らないのは勿体ないような気もしますが、とにかく大事にされていることは一目で分かります。どういった方が乗られているのか担当の営業マンに尋ねてみると、とても忙しいお仕事をされている方で(職業は個人情報保護の観点から非公開とします。)収入もかなり高いそうです。室内にクルマをしまえるように造った家で暮らし、スカイラインGT-Rは常に家の中にあるそうです。で、一日の終わりに晩酌をしながら大切にしているスカイラインGT-Rを眺めるのだそうです。私もこういった方は何名か存じ上げております。室内とまでは行かないにしてもガレージで同じような事をして楽しんでる方、いろいろなクルマを何台も新車のような状態で保存されてる方、値上がりを期待して投資目的でクルマを所有される方など。クルマの楽しみ方は本当に人それぞれだとつくづく思います。

私としてはクルマは乗って楽しむのが一番好きです。運転も好きだし出掛けるのも好きだし眺めるのも好きですが、でもやっぱり運転が一番ですね。エンジンのレスポンスとかクルマ自体のコーナーリング性能などを堪能しながら運転する。これです。かと言ってあんまりスピードは出さないです。事故は嫌だし、ガソリン高いし、急いでいるわけでもないですし。写真は私の愛車、BMWミニクーパーS6速マニュアルです。母畑ダムの方へドライブに行きました。ミニ好きの方ならお分かりかと思いますが「ゴーカートフィーリング」の異名を持つ第一世代です。小さなボディに1600㏄のスーパーチャージャー付エンジンなのでもちろん十分速いクルマですが、私が気に入っているのはコーナー性能。ガッチガチの足回りではなく(と言っても普通のクルマより相当固め)適度にしなやかでヘアピンカーブを抜けるのが楽しくなるクルマです。マニュアル車という事もあって連続コーナーでは法定速度内でもエキサイティングなドライブが楽しめます。このクルマは買って良かったと思います。故障が多いことで嫌厭されている第一世代ですが、デザイン的に根強い人気を持つクルマです。実際に乗ってみますと故障はほとんど無いです。ABSセンサーと左のドアミラーが壊れたくらい。あと、純正にさえこだわらなければ部品も割と安いです。修理も思ってたより簡単ですし。そういえば私の場合、壊れたクルマを直すという楽しみ方もありましたね。ちょっと変わった楽しみ方をするのは私も同じでした。

 

クルマの替え方

クルマの替え方

愛車BMWミニクーパーSですが、手放す事となりました。と言っても娘のクルマが必要となり譲り渡す事になっただけなので、家に帰ればそこにあります。娘は免許を取ってから私のミニクーパーSしか運転したことがありません。ペーパードライバーなので慣れたクルマの方が良いだろうと思いまして。

私の趣味が減ってしまうので増車する事にしました。マツダのロードスター(現行)が好きで8割決定しておりましたが、ホンダビートに変更しました。何故ならビートは昔から欲しかったクルマなので。ビートは平成3年から平成5年に生産されていた為、約30年前のクルマです。ロードスターは今も生産され続けてますので後からでも買えます。この先何台のクルマを手に入れられるか分かりませんが、順番的に古い方から手を付けないと、もう買う機会が無くなってしまいます。ビートも値段上がってきてるし。内外装はともかく走行距離が少なめのビートを探しオークションで落札しました。平成4年式で走行距離が65,783㎞、修復歴なしの評価点3.5点。最初、ゆくゆくは販売しようとも思ってました。しかし、エアコン効かない・クラクション鳴らない・スピードメーター動かないという出品票には記載のない不具合がありました。エアコンはガス補充で直りました。今もガンガン効いてます。クラクションは接点を磨いて直りました。音がダサかったので、社外のクラクションに取り替えました。スピードメーターはメーター裏のネジを交換したら治りました。原因はサビによる接触不良。ビートはオープンカーなので湿気に弱いそうです。ネットで調べると沢山情報が出てきます。このビートはメーター交換歴があり現在のオドメーターは8,000㎞くらいです。58,000㎞くらいの時に交換したので合計して65,783㎞という事になります。その時もメーターの交換をしなくてもネジの交換で直ったんじゃないかと思います。メーターは高い部品なので私的にはラッキーでした。修理に掛かった費用はエアコンガスR12×2本とホームセンターから買ってきたサビに強いステンレス製ビス(10本入り)なので数千円でしょうか。その後パワーウィンドウスイッチが壊れました。運転席側のドアガラスが上がらなくなり分解して清掃&接点磨きで直りました。その次は室内灯(ビートの場合運転席足元にあります。)がドアを開けたとき連動して点灯しなくなりました。ドアスイッチを分解&接点磨きしてみたら直りました。この時、ゆくゆく販売しようと思ってた考えを捨てました。これだけチョコチョコ不具合が出ると後々トラブルになるのは必定。その後ナンバー灯が点かなくなりました。直りました。そう。分解&接点磨きです。走行距離が少ないという事もあり、しばらく動かさなかったのではないかと思います。クルマは長い間動かさないとダメになります。研究所では週一でクルマの展示替えを行いますが、理由の一つにこれがあります。

修理代は掛からないにしてもこれだけ頻繁に故障するビートは、お客様におすすめ出来ません。仕方が無いのでこれは私の愛車としてずっと乗ろうと思います。修理も好きだし。そう決めたときマフラーと車高調とアルミホイールをポチってました。仕方なくですよ。仕方なく。後でお金を貯めてエアクリーナーを社外品に交換しようと思います。もー仕方が無いなー。

クルマの改造

クルマの改造

クルマの楽しみ方の一つとして「チューンアップ」があります。パーツを交換したり加工したり自分好みにカスタマイズしていく事です。これは楽しい。ただ私の場合、改造はしても不正改造は致しません。お客様からの依頼でもお断りします。できれば不正改造車でのご来店もお控えください。イメージ悪くなるので。なんでそこまで不正改造を嫌うかと言うと、私は検査員の資格を取得しています。私の場合専門学校には行かず、働きながら自分のお金で講習を受講し、3級整備士→2級整備士→自動車検査員を取得したのでそれなりに苦労しました。今は整備工場に勤めているわけではないので関係ないと言えばその通りですが、私個人のプライドの問題です。たまに不正改造を嫌うあまり、ちょっとの改造も許さない自動車会社があります。私はこういう会社も嫌いです。その改造が不正か不正じゃないかくらい勉強して頂きたい。プロのクルマ屋なんだから。

数年前、自動車製造メーカーによる完成検査不正が相次いで発覚しましたが、私にはとても信じられないニュースでした。検査していない数値を記載するというのがちょっと。検査方法を知っていて検査に必要な機器も揃っているのに、架空の数値を記入して合格させるというのは自身の仕事を馬鹿にした行為です。組織というものは利益追求の為となると、法律を超えた指示を出す時があります。発覚したのは抜き打ち検査でと言ってますが、おそらく内部告発でしょう。検査員の中には会社の指示であっても、嫌々やっていた方がいたのだろうと思います。組織に逆らってでも「不正は嫌だ。」と声を上げる方がいるという、自浄作用が働く企業であれば今後は大丈夫だろうと思っております。

話はカスタマイズに戻りますが、ビートの車高調を有限会社ライブラという会社で製造している「マイルドダンパー」というものにしました。マイルドってくらいだから柔らか目の足回りなのかと。私は数年前に腰を痛めてまして、硬すぎる足回りだと長く乗っていられないものですから。受注生産なので時間が掛かると言われましたが、伝えられていた期限よりも早めに届きました。時間が掛かったのでと、クオカード500円分が同梱されてました。お気遣い有難うございます。時間が空いた時に早速取り付けてみました。もちろん減衰力は一番柔らかくして。ところがこれを通常通り(説明書通り)に組み付けると最低地上高が9cmを下回ることが分かりました。いつ外れてもおかしくない危険な付け方(説明書に「これは危険だから止めてください」と書かれていた取り付け方)をすれば9cmをギリギリ確保できる感じ。製造元に連絡を入れると初めて言われたクレームとの事。画像を送って確認してもらうと、確かに9cmを確保できない事が分かってもらえました。ライブラの担当者と相談して少し長くした部品を造ってもらいました。ライブラ側はこの商品について車検対応とも競技用とも謳ってないのでライブラの責任ではない。でも情報提供には感謝しているので、少し長くした部品を格安の料金で販売すると言われました。それはおかしいんじゃないかな?という気もしましたが、不正改造車に乗るのが嫌なので購入しました。新しく造ってもらった部品は11,000円でした。本当はこういった話は誹謗中傷になるかもしれないし、こういう場所に掲載すべきでは無いような気もしますが、事実だし言われた通りのお金も払ったんだから掲載しても良いかと。現在この部品を検索すると「最低地上高を保てない場合があります。」と説明文が追加されております。という事は改善せず以前のまま販売しているという事なのでしょうか?だとしたら情報提供に感謝したのは何だったんでしょう。それにしてもこのライブラという企業には自浄作用があるのだろうか。まあ、もう取引することもないし関係ないからどうだっていいです。

クルマの価値観

クルマの価値観

クルマを使って楽しむのは何も運転する事だけではありません。コロナ禍で何かと制限されてしまいますが、どこかへ出掛けて美味しいものを食べたり温泉に浸かってみたり素晴らしい景色を見たり途中の会話を楽しんだりと思い出作りだってクルマの楽しみ方だと思います。私だって運転も好きですが、たまには珍しいものを観たりしたいし一泊か二泊して羽を伸ばしたりしたいです。ただ私の場合移動する空間に他人がいる事が苦手でして、バスや電車での移動よりはクルマで行く事を選びます。沖縄へ遊びに行った時も空港からはレンタカーで動きましたし。目的地についてから地元の方と話したり、よそから来た観光客の方と話すのは好きなんですが、移動中はプライベートな空間であって欲しいと思ってます。その方が目的になかったサービスエリアや道の駅など、気軽に寄れるので新たな発見も出来たりします。ご賛同いただける方も多いのではないでしょうか。特に福島県など電車やバスは少ないですし、完全なクルマ社会です。子供のころから家にはクルマがあって、家族で出かけるときは当然のようにクルマでしたから尚更なのだろうと思います。人に慣れていないという訳でもないのですが、クルマの方が落ち着くというか。

そして大人になり自分でクルマを持つようになると、移動している間も楽しもうと考えて装備を追加したり、グレードアップしたり、クルマごと乗り換えたりするようになります。クルマが好きな人と、そうでもない人の差はここにあるかもしれません。目的重視か移動重視か。あるいは両方の場合もあると思いますが、移動中に楽しみたい気持ちが大きい方はクルマ好きになりがちなのでは。私が今まで出会った方の中で印象に残ったのは、夫婦で車中泊をしながら桜前線を追いかけるって言ってた方がいました。すごく楽しそうです。ちなみにクルマは日産プレサージュでした。ご夫婦なら十分な広さです。あとは電気自動車のお客様です。日産リーフが出始めた頃で、航続距離も短く充電スタンドもまだまだ少なかったころにお買い上げ頂きました。奥様のご実家が会津若松という事で、どのルートをどのようにして走るか入念に計画を立てるという、リーフの弱点を逆手にとった楽しみ方をしておられました。奥様の里帰りがゲームになるわけです。今では充電スタンドも沢山あるし、それどころか増えてく一方だし、当時ほどのスリルは味わえないでしょう。つまりこの方は2度と出来ない難しいゲームを、年に数回の奥様の帰省で楽しんでいたという事です。更にこの方の凄いところは、団地住まいで自宅に充電器が作れなかった事です。それでもリーフを選ぶとは、普通なら誰もが避けたい環境ですよね。まさに強者です。

ドライブばかりではなく、通勤や普段の買い物などでもクルマをご使用される方がほとんどかと思います。どうせクルマに乗って移動するなら、移動自体を楽しんで通勤や近所での買い物も楽しくなるように仕上げていくとクルマの価値観は格段に上がると思います。

 

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